婚約者

ふと、好きな歌の歌詞を、共有したり。

今、見ているテレビ、面白いよとか、連絡したり。

渋谷に行けばセンター街を通り抜け、いつもの私たちのルーティンがあった。

 


入学した時は身長同じだったのにね。

そりゃ、だって、小さい頃の睡眠時間足りてないならだよ。私たくさん寝てたもん、ずっと寝て起きたい時に起きてたもん。

そっか。

 


おそろいの指輪を買って、婚約などと言って、ヘラヘラと過ごした、でも、21歳になった今、その、中野の雑貨屋さんで買った指輪、大好きだったあの子との婚約指輪が、どんどんと私を締め付ける。あの時婚約指輪〜!とふざけて言った私を、私は、よく覚えている。

私が沢山喋り沢山聞いてくれた、もう、その時から居なかったのかな。

 


ピンク色のシャツ、お揃いで買おうよ。

なんで?

だって、でてくるじゃん!ベリのさ!

あ、そうだね。

 


長い時間を共にすごした。息苦しい思春期を、もうある程度自立してしまった私たちは、色んな姿に形を変え飛び立ってゆく。

そこに、私の理想を押し付けてはならない。

そんなこと、分かっている。

分かってるけどね。

現在、を受け入れてしまった私には、もう、知っている、あの子、は、居ない。過去の存在である。無くなったんだ。事実、姿かたちも変わり、言動も、変わったからもう、居ないんだ。あの子は、どこにいっちゃったんだろう。どこにも、行かないでほしかった、でも、そんなこと、そんなこと、

あの子は、今どこで、生きているのだろう。自分のためだけに強く日々を生き、また、絵を描き、文化的な生活をして、何にも搾取されず依存せず、朗らかな生活を送って居て欲しい。

きっと、もう。にどと、会うことは無い、婚約者のあの子。